鳥取県が来年度から省エネ住宅に対して助成をはじめると、平井知事が年頭所感で表明しました。
こんな方に向けて書かれています

新築を建てたい、また仕事で新築を建てているけど、どれぐらい影響がありそうか、基準を満たす工務店をどうやって探せば良いのか、そもそもなんで県が国より厳しい基準案をしこうとしているのかを知りたい。
鳥取県 省エネ住宅の基準案、最低値Ua値0.48、C値1.0はどんな影響があるのか
ざっくりいうと、
お客さんの立場から見れば、県の基準に達しているかどうか質問すれば、性能が著しく低い家を選ぶことがなくなるでしょう
工務店の立場から見れば、これまでTG-1以下の水準でしか建てられていない場合、対応を迫られるでしょう
鳥取県が策定した基準【案】を細かく見てみましょう


先日見送られた国の義務化基準はUa値0.87でした。国の定めるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の設定がUa値0.6なので、行政が発表している基準の中では、高い方ではあります。
Ua値0.48はどれぐらいの断熱仕様なのか
ざっくりとした仕様で言うと、高性能グラスウール16K(熱貫流率λ0.034)換算で
- 天井断熱:220mm
- 壁充填:105mm
- 床断熱:押出法ポリスチレンフォーム3種100mm
- 窓:樹脂サッシLow-E ペア
ぐらいです( ※自立循環型住宅モデル一般型に基づき算出)。
樹脂サッシこそ使いますが、壁がグラスウールの充填断熱で大丈夫なため、技術的にこれに対応できない工務店はほぼいないでしょう。なお、壁が吹付ウレタン105mmや、ウレタンパネル充填、外張りの押出法ポリスチレンフォーム3種65mmなどでもそれに近い性能が期待できます。断熱の強化によっては樹脂アルミでもなんとか届きます。
つまり、難しいということはありません。このレベルであれば、間違いなく光熱費で投資回収しますので、断熱が過剰と言うこともありません。
C値1.0はどれぐらいの気密性能のなのか
最低限気密がとれている、という感じです。
一棟ごとにこんな装置で気密測定をします。
一般的に、C値1.0だと、3種換気であれば機能しますが、それでも50%は隙間から給気されるとの研究結果が出ています。
1種換気を使うのであれば、0.5以下、できれば0.3以下と言われています。
C値1.0というと、施工している僕の肌感でいうと、
- 吹き付けウレタンなら普通にクリア
- シート気密でも教科書通りやれば普通に出せる
感じです。なので特に難しい数値とは思えません。必ず1棟ごとに気密測定が必要なので、工務店にとっては、それが負担と言えば負担になるかもしれません。お客さんにとっては、自分の家の性能がきちんと測られるわけですから、施工も気をつけるはずですし、プラスに働くでしょう。
基準を満たす工務店の探し方
Ua値やC値をそもそも掲げている工務店やハウスメーカーであれば、この基準に対応できるはずです。検索してwebサイトを見てみればわかるでしょう。
県が住宅性能を策定する意味
どのような家を建てようが民間の自由であり、規制すべきではないという声も聞かれます。
しかし、住宅が消費するエネルギーは、県の中で循環せず、電気代や灯油代に変わり、県外、国外へ流れていってしまいます。また、ヒートショックをはじめとする健康の影響と健康寿命を考慮すれば、社会保障費の低減も期待できます。
補助金を出したとしても、政策的な便益が期待できるということです。
国の基準の義務化が流れてしまった以上、県としては合理的に考えて県民の利益になるレベルを推奨することは理にかなっているのです。
実際のところ、T-G1ってどうなの?
長期に住んだ時の光熱費の回収や快適さ、地球温暖化の抑制などの効果、付加断熱による躯体の防御を考えると、僕は、新築するならT-G2(Ua値0.34)が最低ラインだと思っています。


しかし、敢えてハードルを下げ、鳥取県全体としてのエネルギー消費を下げる誘導的な第一歩としての基準設定と認識しています。鳥取県全体で、省エネルギーと持続可能性に取り組んでいけることを願っています。