新築工事で樹脂サッシにするか、アルミ樹脂複合にするか迷われる人が多いようです。樹脂サッシを懸念する理由の最たる物はやはり耐久性。調べてみました。
樹脂サッシ(樹脂窓)はプラスチックだから紫外線で劣化したり色が変わったりするの?耐候性を考えるとアルミ樹脂複合窓の方が良いの?
樹脂サッシは紫外線に弱くすぐボロボロになるのか、調べました
なっていませんでした。30年以上使っている工務店さんに写真を見せてもらいましたが、普通に使えていました。
https://www.facebook.com/hirotoshi.kikuchi.77/posts/1438828886272456
北海道ではそれより前から使われていて、現在も新築戸建は木製サッシ以外ほぼ100%が樹脂サッシなわけですから、長持ちしてなければ、そもそもここまで普及せずに廃れているはずですからね! むしろ樹脂部分より金物のほうが先に来るので、寿命はメーカーの心意気次第でしょう。
およそ40年前の広告も見せて頂けました。
現在販売されているものは、表面の劣化、変色もアクリル積層という技術で相当程度抑えられています。枠の断熱性能に優れ結露リスクが少なくなるのは、アルミ複合より樹脂サッシですから、耐久性だけが理由で、樹脂サッシを諦める必要はない、といえます。
いやいや、バケツとかがボロボロに割れたりしているのに?という疑問を感じる方もいるかも知れません。おそれは、同じ樹脂でも樹脂サッシに用いられる塩ビ樹脂(PVC-U)でなく、紫外線に弱いポリエチレンなどで出来ているからです。
また、私の意見では、例えば山陰の場合、樹脂アルミでは結露リスクが拭いきれないことから、仮に窓が大丈夫でも躯体の耐久性に影響が、、、ということも考えられます。冷気感も抑えられますよ。
樹脂サッシ採用にあたり心配な点
樹脂=プラスチックのイメージが先行して、屋外にある洗濯バサミやバケツのように劣化しやすいんじゃないか?なんて情報もあるなか、まずは樹脂サッシの心配な点を、一度整理してみます。
- 欧米では実績があるが、日本の屋外でも持つのか
- 樹脂サッシカラーは変化してしまうのか
- 樹脂サッシは寿命が短いのではないか
樹脂サッシとは
樹脂というと、ポリエチレン(PE)・ポリプロピレン(PP)・ポリスチレン(PS)といった汎用樹脂(汎用プラスチック)も含まれるので、屋外で使うとボロボロになるバケツや、長く使うと傷だらけになるタッパーウェアがイメージされがちですが、樹脂サッシに用いられるのは塩ビ樹脂。
硬質塩ビ樹脂(PVC-U)は、下水道管などに使われる素材で、長期間の屋外使用でも劣化しにくいものです。また、樹脂サッシの色の劣化は「目視では気にならない程度」とメーカーの耐候性試験から出ています。
樹脂サッシは、塩化ビニル樹脂からつくられた形材を、溶接・加工、組み立て、ガラスをセットして出来上がります。
樹脂サッシとは│ 樹脂サッシ工業会
樹脂サッシは、硬質塩ビ、軟質塩ビ、金属部材、ガラスから構成され、窓枠に硬質塩ビ、ガラスを固定するパッキン部分に軟質塩ビが用いられています。
塩ビ工業・環境協会のパンフレットには、「樹脂と呼ばれるもののうち、塩ビ樹脂は使用年数が著しく長いのが特徴」だと述べられています。
表によると、樹脂サッシの枠を構成する硬質塩ビは’’U-PVC’’と略され、’’U’’はun-plasticised(無可塑性)からきています。日本工業規格JISではPVC-Uと規定されています。
硬質塩ビ樹脂(PVC-U)って何に使われているの
硬質塩ビ樹脂(PVC-U)とは
化学式は、(C2H3Cl)n です。
PVCの主な特徴
日本容器工業グループ 株式会社エヌ・ワイ・ケイより
・透明性を有している(グレーのものは顔料が添加されている)。
・ガラス転移点は75~85℃を示す。
・難燃性で防火に優れている。
・電気絶縁性に優れている。
・耐水性に優れ、加水分解されない。
・耐酸性、耐アルカリ性に優れている。
・脆化温度は-5℃前後と耐寒性に劣る。
・アセトンなど一部の有機溶剤に弱い。
・高温(約200℃)で脱塩化水素反応を起こし、変色・劣化する。
硬質塩ビ樹脂(PVC-U)って何に使われているの
硬質塩ビ樹脂(PVC-U)は、日本では1975年に初めてサッシに使われ始めましたが、元々は下水道管、電線管、外壁サイディングにも用いられてきた素材です。
PVC-Uの劣化対策や試験について
各樹脂窓メーカーでは色の劣化を防ぐためにアクリルで処理をしています。
世界で60年、日本でも40年の歴史によって耐久性が証明されている樹脂窓ではありますが、設置を希望されるお客様からの最も多い質問は、現在も外観カラー色の耐候性に関してです。
YKKAPカタログより
YKKAP:樹脂窓APWシリーズ
塩ビ樹脂(PVC)にアクリル層が重なっており、アクリルが着色と表面保護の2つの役割を果たしています。
アクリルは紫外線を透過させ、それ自体が紫外線で劣化しないため外観色が変化しません。
プラチナステン:外観カラー色
以下の通り、サンシャインウェザーメーター促進試験で10年相当となる4000時間時点で、色差ΔE=4まで届いていません。YKKでは、色差ΔE=4が「目視で色の違いがわかるレベル」としています。
ホワイト・ブラック :外観カラー色
また、ホワイトとブラックにおいては国内の屋外曝露試験で30年弱経過したものの結果が出ています。
ホワイト27年ΔE=1程度、ブラック26年ΔE=2程度ですので、目視でわかるような色の劣化はしていません。
エクセルシャノン:樹脂サッシ
資料は見つかりませんでしたが、YKKAPと同じように、アクリル樹脂を採用して紫外線による色あせを防いでいるようです。
リーセントシルバー色
- サンシャインウェザーメーター耐候促進試験3000時間:色変化ほとんどなし
- UVテスター800時間:色あせほとんどなし
参考までに、サンシャインウェザーメーターの機械は上記のようなもので、屋外暴露に比べ数倍~10数倍程度の促進倍率の試験ができるそうです。この試験は、国内では標準的な促進耐候性試験として扱われています。
LIXIL[TOSTEM]:エルスターXより
LIXILの窓についてはカタログから仕様を引っぱってきました。主材質の部分に、アクリルと硬質塩ビ(U-PVC)と記されており、こちらもアクリルが使われています。
[使用実例見つけました]新潟・緑の家より
ネット上で公開されている他の長期間の使用例ですと、新潟に緑の家という設計事務所さんのblogが見つかりました。2010年時点で20年経過した樹脂サッシの様子(ご自宅)をレポートされていますが、2020年現在で30年経過しています。設計事務所として今も樹脂サッシを提案されている様子です。