再エネは地域経済の柱になる?ドイツの市民エネルギー会社の話を聞いてきた

先日、ドイツ市民エネルギー会社のソーラーコンプレックス社ベネ・ミュラー氏の来日に合わせて兵庫県明石市で講演会があり、話を聞いてきました。通訳は、在スイスジャーナリストの滝川薫さん。家に帰ってからひたすらメモしたノートを見返すと、つまりは域内循環のことを語られたものだと振り返りました。今日は話のなかで気になった点をいくつか書いてみたいと思います。

ドイツと日本、10年後に大きくちがうエネルギー源

ドイツでは2022年までに原発の運転停止が決まっていて、2030年には2/3が再生可能エネルギー(再エネ)になる計画だそう。2018年の暫定値で35%程度が再生可能エネルギーなので、10年ほどで大きく転換しようとしています。

エネルギーを生み出すもととするのは再生可能エネルギーと言われる、太陽光や水力、バイオマスなどの人間が使う以上に自然界に補充されることがわかっているエネルギー源。

日本はというと、2030年に3/4以上が原子力+化石エネルギーという発表を出しているので10年後も今の暮らしとあまりかわらないエネルギー源ということです。

出典:ミュラー氏発表資料より

エネルギーの域内循環によって地域購買力を残す

ドイツでもこれまで国外に流れてしまっていたエネルギー代。地域内でエネルギーを生産し、地域にお金を残すことを、ミュラー氏は「地域購買力を残す」という表現で多用されていました。

ミュラー氏から、マウエンハイム村という地域ではこれまで暖房用オイルに支払っていた分20万ユーロ/年(2,600万円/年)の流出がなくなり、地域に購買力を固定することができているという話がありました。そのお金は農業林業に循環させることができているということでした。

家計に置き換えてみると、出費が少なくなった分好きに使えるお金が増えることと同じですね。また2,600万円というと、2015年の世帯所得(日本、中央値)として428万円をもとに計算すると、約6世帯の家庭を養うことができる金額です。人口430人の村 (※1) だったそうですので、大きな金額です。その後人口が500人(※2)に増加したデータも見つかり、数年で地域雇用が増えていることがわかります。

※1 出典:『農業協同組合経営実務』第 65 巻 7 号、2010 年

※2 出典:日本における地域価値創造分析の社会実装、2016年

日本のエネルギー代も遠く海外の産油国へ流れている

日本では、現在年間28兆円分のエネルギーを海外から購入しています。しかし21世紀中に枯渇するとされている化石エネルギーの生産量はこれから減少し、需要はあがり価格が高騰することが分かっているエネルギー源です。

ミュラー氏はこのようなエネルギー源を使い続ける地域を「負け組の地域」として、常にお金を失い続けるワナに直面していると話していました。

これは環境省のデータを持ってきたものですが、データから見ると、国内でエネルギー代赤字の自治体が9割あります(青色以外、2015年)これを見ると日本も「負け組の地域」の例外ではなさそうです。

出典:環境省「地域経済循環分析とは」(2015年12月)

このデータではエネルギー代の赤字が自治体の「基礎体力を奪っている」と表現されています。

再生可能エネルギーは持続可能なことへの投資

太陽光や風力、水力と言った再エネは、初めの投資のみで無料でふりそそぐエネルギーであり、設置のあとはほぼコストなしでエネルギー生産ができる投資であるという話が出ました。

ソーラーコンプレックス社が事業を展開する南ドイツは、太陽光発電に向いている地域ではないと断言されていましたが、2018年末までに30,000kwhのソーラー発電施設を設置してきました。

また日本ではどのような再エネが実現できるかという点では、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスがあがりました。温暖化の影響で強力な台風が襲来することは分かっていること。でもその脅威は原発施設でも風力施設でも同じで、しかし被害が出たときの規模は大きく違うのだ、とミュラー氏は述べられました。

再エネ施設の破壊は小さな悪でも、原発や化石エネルギーは長期的持続的にみるとずっと大きな悪なので、それを選ばない選択をする、というコメントが印象的でした。

まとめ

2011年、日本の福島第一原発事故を発端としたドイツのエネルギー政策の転換により、2030年にはエネルギー源が大きく異なる二国の未来が描かれていました。2000年創立当初、20名の市民から投資を始めたソーラーコンプレックス社の事業によって、エネルギー代の域内循環が起こり、より良い地域づくりにお金を使えている事例を知ることができました。

2019年現在の日本では、そのエネルギー源を選択しているが故に地域外(国外)へお金が流出していて、枯渇エネルギーの値上がりによって購買力と豊かさが奪われる「負け組の地域」となるという事実を突きつけられました。また原子力という長期的にみて環境的にも金額的にも高コストなエネルギー源を選択しないことが再エネ先進国の立場だと、改めて肌で感じる機会となりました。

国内でも地域エネルギー会社を設立する地域もあるし、近い将来わたしが住む地域でも「どうやってエネルギーを作って、どこから買うか」という話が出てくるかもしれません。

日本は石油産出もできないし、資源が豊かではない。この事実は確か小学校で習った記憶がうっすらある程度でしたが、実際にエネルギー源を変更しようと考えたとき、意外と身近にエネルギー源があることに気がつくことができました。

将来には、ドイツより平均1.2倍の日射量のある太陽光や、急傾斜の山々から出る豊富な水量からの水力といったエネルギー源を支持したいと思います。

最後に印象的だったミュラー氏の言葉を紹介します。「再生可能エネルギーは農村部だけが余剰に生産できるもので、その構造は、大都市に届ける野菜と同じだ」

山地を選んで移住してきた身としては、これからは農林業だけでなくエネルギーの生産ができるという未来への可能性を感じることができる機会となりました。

この記事を書いた人

田上真由

三重県津市出身、大学では建築を学ぶ。水や空気といった大切なものは山が生み出していることを知ってから、自らも山間部に住むことを決意。新しい発見のある山暮らしを楽しみながら、木の家づくりを通して山に関わっていきたいと思っている。鳥取県の智頭町へ来て、床張り壁塗りといったDIY、斧で薪割りするのを覚えたところ。