光熱費で元を取るのは多分無理
よく断熱性能を強化すると光熱費で元が取れますか、という議論があるんですが、僕の答えは現実的に施主さんが手に入る価格帯、というの含めると、ZEHないしT-G1(Ua値0.48)ぐらいが単純に35年で見たコスパのラインだと考えます。個人的にはG1のスペックをG3にしても、G3にするためのコストを光熱費だけで回収することは、例えば35年だと鳥取の気候ではかなり厳しいと思います。
もちろん電気の単価がものすごく上がるとかで単価を操作したり、気象条件をより厳しくしたり、50年、70年と引っ張れば、元が取れるというシミュレーションはできるとは思いますが、数字遊びと感じます。
そもそもコスト重視のG3が存在しない
加えて、G3を標準とする工務店・ハウスメーカーと、G1・ZEHぐらいを標準とする工務店・ハウスメーカーの戦略の差もあります。前者は細部まで拘ったクオリティを追求しがちであることに対して、後者は割とコスト寄りにしている、ということもあり、一般的なお施主さんがG3を求めると、
- 高価格帯で勝負する工務店の普段の見積もり(当然高め)
- 不慣れなG3をやりたくない価格重視の工務店の見積もり(結果的に高め)
のどちらかになってしまう、という傾向にあります。G1やG3にするかかりまし費用が、純粋に断熱材だけで収まらない、というのがネックです。
コストよりの家でもZEH(Ua値0.6w/m2k)程度にはなる
まして、いわゆるコストに全振りしたような家であったとしても、ZEH、Ua値0.6w/m2Kぐらいはあることはザラです。そこから、ちょっと窓を変えれば、T-G1(Ua値0.48w/m2K)。正直、G1はほとんど達成可能です。
比較対象がここまで行けば、もう200万円かけてG3にしたところで(実際の断熱材等の材工金額は100万程度であっても、お施主さんが手に入る価格となると、200万ぐらいは開くでしょう)、光熱費の回収はおそらくおぼつきません。もちろん、そんなことを言っていくらでも電気を垂れ流して、電気代払えばいいです、というわけではありません。あくまで金銭的な損得では、という話とご理解いただきたいです。
それでも弊社は付加断熱がしたい
では、なぜ弊社はG3ばっかり作っているかというと、付加断熱をしたいからです。
躯体を熱にさらさず、外壁→透湿防水シート→ネオマフォーム表面で3重の防水ができること。柱を熱の変化にさらさず、安定した状態を保てることで、クロスのクラックや、結露、カビといった問題のリスクを下げられること。長期的な耐久性の観点から、これはとても良いと考えています。
さらに、光熱費には反映されずとも、僕は付加断熱によって壁の表面温度が高く保ちやすい、ということはとても体感に影響すると思います。生活空間を一段押し上げる価値があると確信しています。
結果的にそれを実装すると限りなくG3に近づくので、まあ鳥取県も独自基準があるのだし、最高等級にしておけばいいじゃない、という判断で0.23w/m2kを自社基準としています。補助金も出ますしね。総合的に考えると、ストレスなく終の住処として、数十年先でも充分通用するハイスペックな家として、長く使ってもらえるかもしれない。
こういった見えない費用を加えれば、お施主さんにとっても元が取れる可能性は広がる、という思いで、ご提案をしています。お高く留まりたいわけではないんですけど。
もちろん意匠や家具にもっとお金使いたいから!という判断も個人の自由なんです。でも、せっかく作るなら、体感と耐久性の向上に使うのはどうでしょう?