結局断熱材ってなにを選べば良いの?

実際は何を選んでも大丈夫。断熱材はそれぞれ一長一短があり、使い方を間違えないことが重要です。基本的な数字を2つ理解して、工務店や設計者とよくよく相談しながら進めると良いでしょう。

目次

断熱性能を比べるために、2つの数字を理解しよう

断熱材には必ず、性能を表す数字が書いてある

熱伝導率

断熱材の自体の性能を比べるには、熱伝導率を見ます。 数字が小さい程、断熱性能が高いということになります。 λ (ラムダ) 値と呼ばれ、単位は【W/(m・K)】で表します。断熱材の素材としての性能を表しているので、厚みは考慮していません。

断熱材の外側と内側で1度温度が違う時、厚さ1m、面積1m2あたり、1秒間に伝わる熱量です。

代表的な数字だとフェノールフォームが0.020、高性能グラスウール16Kが0.038、木材は0.12ですね。

熱抵抗

材料の厚みも含めて断熱性能を見るには、熱抵抗(R値)を見ます。この数字が大きいほど、断熱性能が高いと言うことになります。材料の厚さ[m]/熱伝導率[W/(m・K) ]=熱抵抗 [(m2・K)/W] です。

100mmで比べると、フェノールフォームのR値が5、グラスウール16Kが2.6、木材が0.83ということになりますね。

他に断熱材で考慮すべき要素

コスト

価格ごとにかなり乖離があります。グラスウール、ロックウールが比較的低コストで、ウッドファイバーやセルロースファイバーは割高です。

施工性

施工性の悪い断熱材は、工務店によってきちんとした性能が出ないことがあります。袋入りグラスウール、ボード系の断熱材は施工者によって大きくばらつきが出ます。現場発泡ウレタンや、吹き込みのグラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどは専門業者による責任施工になるため、性能は安定します(ただし、コストは高めです)。

調湿性能

湿気を吸放湿できる能力が高いと、壁内の結露を抑制できます。(「結露しない」のではありません)。セルロースファイバー、羊毛、ウッドファイバー等が比較的吸放湿能力が高いです。

耐水性能

湿気により性能が落ちる断熱材と湿気に強い断熱材があります。湿気に強いのは、羊毛、ロックウール、セルロースファイバー、ウッドファイバー。弱いのはグラスウールです。

熱容量

熱容量が大きい素材は、室温の変化を緩やかにすることができます。ウッドファイバーやセルロースファイバーが熱容量が大きいです。

何を使うかより施工方法と設計に注意

仕上がってしまえば見えなくなる断熱の品質を追い込むことは難しく、また現場の断熱に対する不理解から、悪気はなくても施工品質が安定しないことがあります。また、断熱に理解がない設計者が設計すると、そもそも断熱が取りにくかったりするため、断熱材の種類よりも設計者、施工者が、断熱について十分に理解しているかが問われます。

もし断熱について強い関心があるのであれば、断熱についてよく理解している設計士+責任施工ができる吹き込みタイプの断熱にするか、施工する人間がよく理解している工務店に頼むことが重要です。

断熱材ごとの特徴

鉱物繊維系

製造時のエネルギーが比較的少なく、価格も安価であることが特徴です。

グラスウール

ガラスなどの鉱物を繊維状に加工してつくられた断熱材です。流通量が多く入手しやすいこと、シロアリの被害を受けにくく、耐火性があることがあげられます。よく使われるものでは、密度によって10K~48Kまで幅があり、数字が大きいほど断熱性能が高くなります。施工がきちんとできないと性能が発揮できない他、湿気を含むと断熱性が著しく低下します。

ロックウール

玄武岩や高炉スラグなどを繊維状にしてつくられた人工鉱物繊維の断熱材です。グラスウール同様シロアリの被害を受けにくく、耐火性があり、施工不良の場合性能が発揮できません。グラスウールに比べると水に対して撥水性があり、吸湿性能が低く吸音性が高いです。石綿(アスベスト)と外観が似ていますが、繊維が非常に太く原材料も異なるため、両者は全くの別物です。

プラスチック系

石油由来で製造時のエネルギーはかかりますが、耐水性があり性能が比較的高い割に、コストもそれなりに安いことが特徴です。ビーズ法ポリスチレンフォームの4号など透湿抵抗値が低い=湿気を通しやすい製品もあります。

ビーズ法ポリスチレンフォーム

EPSとも呼ばれています。一般的に発泡スチロールと呼ばれ、ポリスチレン樹脂に発泡剤、難燃剤を加えて、ビーズ状にしたもの約30倍から80倍に発泡させて製造します。金型に入れて発泡させるため、形を自由につくることができます。

押出法ポリスチレンフォーム

EPSと材料は同様ですが、発泡させながら押し出して成形します。独立した細かい気泡ができるため、EPSよりは断熱性能が高くなる傾向にあります。ダウケミカル社のスタイロフォーム、カネカのカネライトフォーム、積水化成品工業のエスレンフォームなど、ホームセンターでもよく売っていますね。

ウレタンフォーム

ポリイソシアネートとポリオールという成分を発泡剤を混ぜて発泡させた原料です。身近な製品だと食器洗いのスポンジがウレタンですが、これを発泡させ、断熱性能を高めたのががウレタンフォームです。工場で発泡しボード状にする硬質ウレタンフォームと現場で吹き付ける現場発泡式の2種類があります。現場発泡式は容易に気密性能がとれるためよく使われていますが、燃焼時に有毒なシアンガスが発生すること、解体時のゴミが凄いのでわたしたちは使用しません。

高発泡ポリエチレンフォーム

ポリエチレン樹脂を発泡剤を加えて発泡させた断熱材で、独立した細かい気泡がつくられます。柔軟性が高く、特定フロンが使用されていないため環境に優しく、燃えたときの有害性も少ないです。

合成樹脂系

住宅で用いられる断熱材としては最高の性能を誇りますが、その分コストも高めです。

フェノールフォーム

フェノール樹脂に発泡剤、硬化剤などを加えボード状に形成したものです。断熱性がボード状の製品のなかでも高く、熱にも強く、炎を当てても炭化するだけで煙や有害ガスの発生が少ないと言われています。長期間で劣化しにくいとも言われています。

自然素材系

調湿性能が極めて高く、自然由来の製品であることが最大の特徴です。コストは概ね高めです。インシュレーションボードについては意外と製造時のエネルギーがかかります。

セルロースファイバー

パルプ、新聞古紙などを綿状に粉砕し、防虫・防火のためホウ酸を混ぜた断熱材です。現場で柱と柱の間などに吹き込み、または吹きつけます。素材そのものが湿気を吸収・放出することから、結露が起きにくいというメリットがあります。吸音の効果が極めて高く、防火性にも優れています。コストがグラスウール等に比べて高いことがデメリットと言えます。なお、吸湿能力が高いことから内部結露しないというのは間違いで、しにくいというのが正しいです。

羊毛

水はけが極めて良く、 調湿性能に優れます。成形時に接着剤を使用しないので、ホルムアルデヒドを含んでいません。

木質インシュレーションボード

木材チップや樹皮を繊維状にし、マット状に成形した後、補強材、定着材を加えてボード上に成形したものです。価格は高めですが、調湿性能に優れ、熱容量が大きいメリットがあります。ウッドファイバーやフォレストボードが有名です。

まとめ

  • 適切な施工をすればどの断熱材がよいかということはない
  • 設計者や施工者の断熱への理解の方が重要
  • 性能を比べるのは、熱抵抗と熱伝導率を見て比べる
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