
鳥取県が補助金も出して勧める「暖かい住まい」ってどんな家?気になってるんだよなあ。
イベントに参加出来なかった方にも知っていただけるよう、内容をかいつまんでまとめてみました。


鳥取県主催「暖かい住まいで豊かな暮らしを」内容まとめ
鳥取県では、国の基準を上回る「とっとり健康省エネ性能基準」を策定し、現行の「とっとり住まいる支援事業」への上乗せ補助金が2020年4月からスタートします。


10㎥以上の県産材を使い新築する場合の最大100万円の補助に加え、住宅性能を満たす場合に10万・30万・50万円が上乗せされます。


イベントの流れ
- パッシブハウス・ジャパンの福本邦重氏の講演
- 県の取り組み紹介
- パネルディスカッション
パッシブハウス認定住宅にお住まいの福本氏からは、「家事がはかどらない…」「モノが多くて片付かない…」これって奥さんのせいではなく家が寒いからじゃない?という投げかけから始まり、暖かい住まいに住むと、「健康」だけでなく心や時間にゆとりができて「日々のクオリティがUPするよ!」と、住まい手として高性能な家の暮らしを紹介をいただきました。
また、「住居費=住宅ローン費+光熱費+設備の設置・維持費」であることから、長期的にみると性能の悪い家は高くつき、高性能な家はお得になることを説明されました。
パネルディスカッションでは、予算内で暖かい家にするために、南から日射コントロールや部分ごとの断熱性能の均一化などが必要で、設計手法にかかっていること等が紹介されました。



高性能な家は光熱費以外にも、子育て・家計・老後にかかるお金にも効いてくるため、そのお得さをたくさんの人に知ってもらいたいですね!
暖かい住まい=高性能な家ではどんな暮らし?
まず、寒い家=性能の悪い家に住むことにより身体に起きる不調について。
性能の悪い家で起こること
- 冬にヒートショックでの死亡率が上昇
- 血圧上昇
- 健康寿命が短くなる
- アレルギー・気管支喘息等になりやすい
- 子供の活動量が低下
- 病欠が多くなる
福本氏からは、以下のようなことが挙げられました。
- 家事がはかどらない…ミルクのお湯がすぐ冷める、服を何枚も重ねて着る、風邪をひきやすい
- モノが多くて片付かない…こたつや加湿器、温活グッズなど必要、掃除もしにくい



これって奥さんのせいではなく家が寒いのが原因では?
暖かい住まいの住まい手より


30坪(60畳)に6畳用エアコン1台で年中快適に暮らしている福本氏は、実際どんな暮らしをされているかというと、
- 家事が半分になる
- よく眠れる
- 学力向上
- 子供に優しくなれる
- 人が集まる
- 冬が楽しみ
- モノが減ってコンパクトに暮らせる
- 免疫力が上がり、家族がインフル全滅しない
家が暖かいと、子どもが「服着たくな~い」と薄着でうろついていても風邪を引かないし、おむつを変える時は何枚も脱がして着せることもない、そして洗濯の手間がなくなる。朝のストーブをセットしてから寝る必要がないので、家事がおよそ半分になるとお伝えしています。
そうすると、子どもがいてイライラすることが少なくなります。
福本氏の講演より
学力向上がどのように実現するかというと、計画通り換気できることで室内のCO2濃度が下がる(気密性能C値の良い家)、また冬に室温が高い方が学業成績が良いという結果からきています。



また、今まで使っていた暖房機や温活グッズは全てメルカリで売り、収納スペースが最小限で良くなりますよ!
住まい手から見るデメリットは2点
工務店の営業マンである福本氏は、お客様によくデメリットを聞かれるそうですが、
- 建てられる工務店が少ないこと
- 一晩で味噌汁が傷む可能性がある…家全体が暖かく涼しい部屋がない
この2点くらいしか思いつかないとおっしゃっていました。
家にかかるお金を知ろう
「長期的にみると高性能な家がお得」というのは、ライフサイクルコストを比較することで知ることが出来ます。


次世代省エネ基準では、氷山の一角として見えやすい「建築費」は小さくできますが、エアコンは各部屋に必要であり、ランニングコストである光熱費と設備の更新費も大きくなります。
福本氏の計算によると、35年ローンの期間では、次世代省エネ基準でもパッシブハウスレベルの家でも月々の支払い額は変わりませんでした。
住まいにかかる金額 -住宅ローン費(建築費、設備費) -光熱費 -設備更新費
ここで注目したいのは、光熱費は現在の電気代で計算している点です。エネルギー代は年々上昇し、悪いシナリオで光熱費は2倍となることがわかっていますが、性能の悪い家ではその影響をさらに受けることになり、ローン返済中でも月々の支払額が高性能な家と比べて高くなる可能性があります。



悪いシナリオだと2030年に光熱費は2010年の約2倍となることが発表されているよ(2012年経産省発表)
光熱費が上昇すると、住宅ローン借り入れ時に立てたファイナンシャルプラン(ライフプラン)に狂いが生じやすくなります。
あまり意識されていませんが…光熱費に目を向けるって大切です
パネリスト山本ルリコ氏より
設計の上手下手で「暖かさ」が変わる
続いてパネルディスカッションでは、「暖かい住まいを普及していく」ためのコツやポイントについて話が進められました。
冷暖房費のかかりにくい家とは?
同じ断熱性能で建てても冷暖房費のかかる家、かかりにくい家があります
福本氏の講演より
同じ土地・同じ断熱性能でも冷暖房費が違う理由として、次のような設計の上手さが含まれているかどうかが挙げられます。
- 南からの日射を冬には室内に取り込むことができ、夏には遮られているか
- 同じUa値(断熱性能)でも、部分によりU値に大きな差がないか(※)
※家全体のU値の平均(average)であるUa値は同じでも、例えば窓だけ屋根だけといった一部のU値(熱貫流率)が悪い場合、コールドドラフトによる寒さを感じますし、結露が発生しやすくなります。
設計の上手下手は、数字で確認しよう
断熱工事や気密工事をして、どれだけ冷暖房費を抑えられるかは、



とにかく建てる前に計算(シミュレーション)することが大切です!
同じ断熱性能でありながら、窓の数・位置・大きさ、植栽や庇の有無、隣家の近さ…といったさまざまな要因で「暖かさ」「冷暖房費」は変わるので、シミュレーション結果を出してもらいましょう。
暮らしが変わるライン
設計による高効率化と合わせて、福本氏は住宅性能の「暮らしが変わるライン」として
- 断熱性能 Q値1.0以下(Q値は2013年まで用いられていた指標)
- 断熱性能 Ua値0.3以下
- 気密性能 C値0.5以下
を提案されましたが、これはT-G2を超える性能です。



これからの家は、健康・省エネ・暖かいは当たり前、最低ラインです!
とっとり健康省エネ住宅性能
- T-G1 Ua値0.48以下
- T-G2 Ua値0.34以下
- T-G3 Ua値0.23以下
- 気密性能 C値1.0以下
気密性能は、福本氏は「C値0.5以下」ですが、県の基準では「C値1.0以下」です。


改修だとどうすればいいの?
新築ではなく、改修の場合にも「暖かい住まい」を実現するにはどんなポイントがあるでしょうか。
居住空間をコンパクトにして全体を断熱材でくるみ、気密性能を上げることが理想
パネリスト田上知明より
としながらも、部分的に断熱をするとしたら、
- 風呂+脱衣室…ヒートショックになりにくい
- 寝室…朝起きるのがラク、夜のトイレでヒートショックになりにくい
- 窓に樹脂内窓を取り付ける…窓は建物で一番熱が逃げる
交換時期のきたお風呂は、ユニットバスに入れ替える際に断熱材の施工を行うのが良いのではと提案がありました。



子や孫が喜んで泊まって帰る。それって日々のクオリティが少しアップしませんか?寒い家で倒れて寝たきりに…なんてことを考えたら、70歳で家の改修って遅くありませんよ!
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