断熱性能の高い家は「値段が高い」のか、光熱費のシミュレーションで比較する

わたしたちは、住宅の性能を高め、省エネルギーな家をつくることを重視しています。断熱材の性能と厚み+窓の性能と家の大きさ等から住宅の性能を数字にしたのが、Q値やUa値です。

わたしたちが新築をお引受けした際に、目安とする性能は年間暖房需要50kwh以下(およそQ値1.3、Ua値0.35、C値0.5)です。この性能にこだわるのは、全館暖房で家中の温度を均一にすることが可能であり、生涯で見て経済的になると確信が持てるからです。

実際にモデルプランで比較してみた

住宅省エネルギー技術講習設計テキスト(H29.4.ver)ででてくる、日本の断熱基準を検討するのに使われているモデルプラン(2階建て延床面積120.7㎡)を例に検討してみます。

片方の家は、5地域で長期優良住宅(断熱性能等級4)をクリアするQ値2.76(Ua値0.814、C値2.0)、もう一つは、 弊社基準相当として、Q値0.89(Ua値0.298、C値0.3)の性能になるように、間取りはそのまま断熱材及び窓を変えて比較しました。当然材料が変わるので、建物の値段も異なります。おおよそ性能向上に必要な費用は300万程度ですので、長期優良住宅相当は1700万、 弊社基準では2000万とします(材料や設備のグレードで上下しますので、金額はあくまで目安としてお考えください)。

この条件で光熱費がどれぐらいかかるか、建てもの燃費ナビというソフトを使って、シミュレーションしてみた結果がこちらです。

断熱性能の高い住宅は、光熱費がおよそ1.1万/月少なくて済む

弊社基準の住宅は、概ね月の光熱費換算で1.1万円程度の減少になるという結果になりました。単純に計算すれば、建物の価格差が300万ですから、300ヶ月=23年で元を取ることができ、以後は単純に光熱費が少ない家、ということになります。ただし、石油資源の枯渇、日本国のエネルギー政策、為替相場などを考えると、今後も光熱費は緩やかに上昇する想定されます。仮に毎年1.5%ずつエネルギーの単価が上昇した場合は20年強、3%の上昇だと18年弱で元が取る計算になります。

建設予定地は我が家から最も近い、智頭町智頭の気象庁の気候データを使用しました。設定した暖房時の室温は、18度にしています。例えばこれが岡山県津山市だと気象データが異なりますので、もう少し暖房費が少なくなり、どちらのプランも光熱費が下がるはずです。

さらに住宅ローンも含めて比較してみよう

さらに、これに住宅ローンを組み合わせると以下のようになります。

土地700万、頭金300万として、それぞれのケースで比較してみます。住宅ローン金利は全期間固定の1.3%、借り入れ35年として計算します。ローンの支払い+月々の光熱費は、弊社基準レベルだと9.17万円、長期優良住宅レベルだと9.35万円と弊社基準の住宅の方が若干少なくなりました。

現在の金利水準であれば、300万追加で費用がかかりその分を借り入れたとしても、性能向上に投資すれば、月々の支払はほぼ同じ水準に納まるということがいえます。

ローンを払い終えた後は、1.1万月々の支払が少なくなるわけですから、単純に計算しても、20年で264万の差になります。一般的な家庭であれば、その頃おそらく年金で生活をしていると思いますので、この金額差は小さくありません。

ローン計算したexcelのシート。弊社の標準のライフプラン検討シートです。収入や教育費も詳細に入力できるのですが、今回はローンの計算だけで使いました。

家は断熱性能への投資で元を取れる可能性が高い

安くて燃費の悪い車か、高くて燃費のいい車かという話に近いですが、家と車が決定的に異なるのは、保有期間の長さです。車はどんなに大事にしても、20年、20万キロ乗れば、おそらく買い換えのタイミングが来るはずです。しかし家を20年で建替える人はいません。

経済的なことだけではなく、断熱性能が高ければ単純に早く暖まりますし、冷めにくいです。また、日射の熱や住人の熱も逃げていかないので、暖房を付けるタイミングも遅くなります。仮に将来売却したり、貸すことになったとしても、光熱費が少なく快適な家とそうでない家があれば、快適な家の方が売れるはずです。これは、不動産としての資産価値をある程度担保することに繋がります。

いたずらにお金を使うことが良いことな訳ではありません。ただし断熱性能に投資するのは、元が取れる可能性がとても高く、居住空間も快適になります。初期コストがアップするため高く見えてしまいますが、長期的なコストや快適性、環境への負荷も考えると、有効な選択肢であると思います。

ぜひ、新築や改修の際は、工務店や建築家と性能について話し合ってみることをオススメします。Ua値やC値と聞いて誤魔化すようなら、ちょっと?と思っても良いかもしれません。

この記事を書いた人

田上知明

AFP・2級FP技能士 / 2級建築施工管理技士 / 省エネ建築診断士
東京で3年間の会社員勤務の後、自分の家を自力で建てることを志して、建築業界へ。自分の家を建てるはずが、お客さんの家ばかりを建て続けて、結局そのまま大工をするようにになってしまい、結婚を機に鳥取の智頭町へ移住。
美しい田舎で建てたり狩ったりしながら、ぼちぼち暮らしたいと思っていたが、意外と忙しいのと、自分の家がまだ建てられていないことが目下の悩み。