
冷えは万病の元って言うし、やっぱり南国は過ごしやすいし、除雪の回数も減るんだから、別に悪いことばかりじゃないようにも思いますよ…
寒いのは辛いし、地球温暖化って悪くないんじゃないの?という誤解を解きます
たしかに、雪が減れば除雪も楽になります。北国で南国のフルーツを収穫できるようになるかもしれません。



年を食うと雪かきも大変だし、暖かくなるのは良いのう。
しかしそれ以上に、2019年に千葉を襲ったような大きな台風が頻発したり、農作物が育たなくなったり、熱帯性の伝染病の範囲が拡大したり、北極の氷が溶けることによって海面が上昇し、国土が失われたりします。
こういった個別の事象を含め、現在の地球の気候変動はすでに危険な領域に入っており、地球の今の状態を保とうとする力が失われ、あらゆる努力をもってしても再び戻ることがない限界(プラネタリーバウンダリー)に近づいているのではないかと言われています。



地域によっては多少いいこともあるかもしれませんが、圧倒的に良くない事象の方が多いのです。
そもそも地球温暖化とは
温室効果ガスが大気中に増えて、熱がたまりすぎること
大気中に温室効果ガスが増えることにより、熱が地表にたまりすぎることを指します。
温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)、メタンガス、フロンガスなどがあり、そのなかでもCO2が増加したのは、18世紀半ばからの産業革命以降、石炭・石油などの化石燃料を燃やして多くのエネルギーを得るようになってからと言われています。


大気の二酸化炭素濃度(CO2濃度)を見ると、産業革命が始まった頃には280ppm、それが2013年には400ppmを超えたようです。
以前は、CO2がその原因であることに懐疑的な議論もありましたが、現在は概ね人類の経済活動に伴う CO2排出が、温暖化の原因であることはほぼ間違いないと研究結果から結論付けられています。
産業革命以前に比べて、人間活動によって世界の平均気温は、1880-2012年で+0.85℃、2018年には+1.0℃となりました。
温暖化は誰が考えたり決めたりしているの?
IPCC(International Panel for Climate Change)という機関が、世界中の地球温暖化に関わる論文のうち、温暖化の原因や影響について信頼性がある情報かを精査、評価しています。国際的はこの期間がまとめる報告書が各国政府の温暖化対策の基礎となっています。
2018年IPCCの「1.5℃特別報告書※」によると、「2度と1.5度のわずか0.5度の違いでさえ、海面上昇や酸性化、また、干ばつや洪水を引き起こす極端な気象変化を増加させる」「2℃ではなく1.5℃に抑制することには、人間の健康面に明らかな便益がある」ことが示されています。


※正式タイトル:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な発展及び貧困撲滅の文脈において工業化以前の水準から1.5°Cの気温上昇にかかる影響や関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関する特別報告書



温暖化とそれに伴う壊滅的な被害が甚大なこと、その原因がCO2であることは、まず間違いありません。
あれ、じゃあ氷河期がきたらちょうどいいの?
温暖化はCO2増加によるものではなく、氷期-間氷期という地球の自然サイクルの中で見られる温度変化だという説もあるようです。
ただ、国立地球環境研究センターニュースには「次の氷期は何万年か先だということが科学的に認識されています」 とあり、IPCCからは以下の発表がなされています。
温暖化には疑う余地がない、20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間活動の可能性がきわめて高い(95%以上)
IPCC第5次報告書(2013年)より
氷期-間氷期の自然サイクル
- 期間:およそ10万年
- CO2濃度:氷期180ppm ↔ 間氷期280ppm 氷期には▲100ppm
産業革命以前-2013年の変化
- 期間:およそ200年
- CO2濃度:産業革命以前280ppm→2013年400ppm +120ppm
天文学的なリズムで地球に氷期がくるようなタイミングになったとしても、人間が温室効果ガスを増やしてしまっていることで、氷期がこないということも起こり得ます。つまり、人間活動が自然のリズムである氷期を止めてしまうくらい地球に大きな影響を及ぼしてしまっています。
国立地球環境研究センターニュース より



どうやら現在の温暖化は地球の周期的なサイクルとはいいがたいようです。
温暖化で想定される問題
5つの懸念材料と10の項目
気温の上昇が大きいほど、項目に対する影響やリスクのレベルがイエローからレッドゾーン、紫へ移行していくことが示されています。(下の画像参照)


1.5℃上昇でレッドゾーンに入る懸念材料(RFCs)は、「固有性が高く脅威にさらされるシステム」「気象の極端現象」「大規模な特異事象」であり、1.5℃上昇でレッドゾーンを超える自然・管理・人間システムは、「温水性サンゴ礁」「低緯度地域小規模漁業」「北極域」「沿岸域の氾濫」といった項目があります。
代表的な温暖化の影響
温暖化の影響はたいへん多岐にわたり、
- 北極の海氷減少による海面水位の上昇
- 水害、森林火災、ハリケーンなどの大規模災害が増加
- 農作物が育ちにくい地域が拡大
- マラリア、デング熱等の感染症拡大
など、人為的にコントロールすることが困難な状況が生まれます。これらは、
- 生物多様性のロスや種の絶滅
- トウモロコシ、コメ、小麦の生産量の減少
- より厳しい水不足にさらされる
- 健康障害
- 貧困
といった人類にとって重大な問題を引き起こすことになります。
世界の取り組み
では温暖化に対して、世界ではどのような調査や会議がおこなわれているのでしょうか。
IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)
1988年、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された政府間機関。地球温暖化に関する科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を政策決定者等に提供しています。第4次報告書Climate Change 2007(AR4)を発表した際にノーベル平和賞を受賞。
195カ国の政府が関わり、1990年に第1次報告書(FAR:First Assessment Report)が、2013年に第5次報告書(AR5)がまとめられています。
世界の科学者が発表する論文や観測・予測データから、政府の推薦などで選ばれた専門家がまとめます。国際的な対策に科学的根拠を与える重みのある文書となるため、報告書は国際交渉に強い影響力を持ちます。
一部抜粋:IPCCとは?,JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター





研究機関ではなく、世界中の研究された論文を評価し、国際的な取り組みに対して提言を行う機関ですね。
COP:国連気候変動枠組条締約国会議
COP(Conference of Parties)
1992年、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標とする「国連気候変動枠組条約」が採択され、世界は地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいくことに合意。COPは同条約に基づき、1995年から毎年開催されている。日本からは全てのCOPに環境大臣が出席。
1997年には温室効果ガス6種の削減目標を設定した「京都議定書」(COP3)が、2015年には平均気温上昇を「2度未満」に抑えて「1.5度未満」を目指す 「パリ協定」(COP21)が採択されました。
世界が目指すべき目標 「1.5℃特別報告書」とは
2018年のIPCC「1.5℃特別報告書」では、産業革命以前と比べて平均気温を+1.5℃に抑えることが出来れば地球に起こるであろうリスクがかなり小さくなることが示されました。
2℃上昇と比べて1.5℃上昇の場合
・熱波や豪雨については、極端現象が少なくなる
・海面上昇が10cm程度少なくなる
・生物多様性のロスや種の絶滅はより少ない
・トウモロコシ、コメ、小麦の生産量の減少の割合が小さくなる(特に東南アジア、中央アメリカ、南アメリカ)
・より厳しい水不足にさらされる世界人口が50%少なくなる
・2050年までに、気候に関連したリスクや貧困の影響を受けやすい人々の数は数億人少なくなる
一部抜粋:甲斐沼美紀子,IPCC1.5℃特別報告書


↑甲斐沼美紀子氏は、 「1.5°C特別報告書」の日本からの執筆者。日本語でわかりやすくまとめられていますので、リンクをつけています(PDF)
報告書では、「過去の温室効果ガス排出量だけでは1.5℃を超える可能性は低い」としながらも、「このままの率で温暖化が進めば、2030年から2052年の間に気温は1.5℃上昇すると予想される」
そして、これまでの各国の約束だけでは、気候変動を1.5℃に抑えるには不十分だとしています。
1.5℃上昇に抑えるために必要なこと
2030年までに、CO2排出量を約45%削減(2010年比)
2050年頃までに、「正味ゼロ」
甲斐沼美紀子,IPCC1.5℃特別報告書
地球温暖化を1.5℃に抑制することは不可能ではない。しかし、社会のあらゆる側面において前例のない移行が必要である。
環境省,IPCC「1.5℃特別報告書」の概要



もし本当に温暖化を抑えたいなら、全産業領域で努力をする必要があります・・・。
ある点を超えた気候変動は、後戻りすることがない
温暖化が地球に与える影響は「気候変動」に含まれますが、これは地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)の項目のひとつです。


この限界を超えると今の均衡状況が失われ、再び戻ることがなく、急速に別の均衡に向かうとされています。現在の「気候変動」は、すでに不安定な領域に突入しています。
わたしたちが何かしら対策を施さないと、日本で主食の米が育たない、夏には北海道でも40℃超えが当たり前…といった未来が2100年でなくともその先にあることを知っておかなくてはなりません。





というわけで、製造時にCO2排出量が少なく、長期間かけて木自体にCO2が固定されている木造住宅、電気代が少なくて住む省エネ性能の高い家づくりを強く推奨しています!



最後に商売臭くなってしまいましたが、新築を建てるだけの気概がある方には、ぜひ地球環境への配慮もぜひお願いしたいところです。