わたしたちは工務店なので、できれば新築の注文住宅を建てて貰うのが売上としてはありがたいです。ただし、それ以上に少しでも良い判断材料を提供し、住宅に関わる不幸を無くしたいと強く思っています。(青臭いですが、本当ですよ!)
家づくりには正解がありません。どんな人生が良いか他人の物差しで決められないのと同じように、家づくりも人それぞれです。こんな暮らしがしたい、こういう生活だったら満足して生きられる、というコンセプトがぼやけたままだと、業者のセールストークとネットの噂に振り回されることになります。
住宅の営業マンは、家を売るプロです。住む人間の望みを叶えてもくれるのですが、あくまで最終的には売れることによって仕事が成り立つのです。工務店やモデルハウスで営業を受ける前に、よく勉強しましょう。そもそも家の必要の是非、方針を考えるための知識と、建てると決めてから何を基準に決めて誰にどのように依頼するかという知識はかなり異なるので、主に検討のために必要と思われる本を紹介します。
そもそも建てるかどうか迷っているときにオススメする3冊
子どもが小学生になる前に、家を買いたいと思ったら読む本
著者はファイナンシャルプランナーなので、主に資金面からの話です。お金に関する話はほぼこれ一冊で賄えると思います。401kとか教育資金とか色んな話が出てくるので、ちょっと盛りだくさんかも知れませんが、家に限らずこの内容ぐらいは理解してほいたほうが良いです。208ページほどなので、分厚い本ではありません。
住まいの不安がなくなる 絶対失敗しない家・マンションの話
マンガですが、さらっと読むには良いと思います。内容は濃くありませんが、まずは大きなイメージを掴むことが大切です。図書館で見つけて手に取って貰うのも良いかも知れません。 なお、戸建ての方が耐震性がよいという記述がありますが、これは誤りでケースバイケースです。特に1980年(昭和55年)以前の建物は要注意。
「家を買う」前に知っておいてほしいこと
著者は不動産コンサルタントなので、資金面の話も出てくるのですが、不動産自体の話に重きが置かれています。マンションの規模ごとの特徴も書かれており、参考にはなるでしょう。建売について肯定的なのは、不動産屋の立場ゆえの回答だと感じますが、現場経験のある身からすると、施主の顔が見えないこともあり、やっつけ仕事になりがちなので、ほとんどの建売はオススメしないです。
家を建てると決めた後にまずは読むべき2冊
間取りや性能や土地や住宅ローンなど、トピックごとに色々あるのですが、全般に通用する本を2冊紹介します。
マンガ はじめて家を建てました!―いちばん最初に読む家づくりの入門書
2009年とちょっと古いのですが、流れを理解するという上でとても役に立ちます。著者は、デザイナーで建て主なので、偏った利益誘導はありません。この例は新築ですが、中古の改修やマンションでも参考になる点はあるでしょう。
2点ほど補足
- 2Fが暑い、というのは屋根面の断熱材の不足と、夏場に日射を遮る工夫ができていないせいで、設計段階で対策がとれます。
- 1Fで灯油ストーブを使っていますが、概ね近年の新築は隙間がないので一酸化炭素中毒の恐れがあります。換気扇はついていると思いますが、排気口が外部に伸びているタイプ(FF式)以外は、基本的に危ないと考えた方が良いです。
あたらしい家づくりの教科書
著者は設計士と建築家なので、主に性能面の話が書いてあります。基本的に住まい手がこのぐらいの内容を理解していると、不誠実な業者はふるい落とせます。わたしたちもパッシブハウスジャパンという団体に所属していますので、基本的にこの本の考え方を支持しています。簡単に要約すると、
”機械に頼るのではなく、適切な断熱+日射の遮蔽を行うことで家は快適になるし、その性能の決定は、しかるべき計算とシミュレーションで行える。
性能を上げたことによる光熱費の削減分で、性能向上のための投資回収は可能。
スクラップアンドビルドになるような家は世の中に発生させるべきではない、同じ快適さならエネルギーはできる限り使わない方が良い”
という考え方に基づいた内容になっています。日本の建築業界の平均からすると、過剰な性能に見えますが、すべて根拠がある話なので、家を建てるなら本書の内容は考慮に入れることをオススメします。
まずは図書館で借りたり、kindleでサンプルを読んでみよう
手元に置いても価値がある思えるという本を紹介していますが、たぶん近所の図書館にも蔵書があると思うので、まずはお金をかける前に、借りて読んでみてはどうでしょうか。 記事の画像はamazonにリンクしているのでkindleを使っている方は無料サンプルでも確認できますよ。
コンセプトを悩んでいるなら、こちらも参考になるかも知れません。