耐震等級3のための地震と建物の基礎知識

地震、怖いですよね。僕自身はまだ大地震で被災したことはないのですが、倒壊した家屋を映像で見るたび、胸が痛みます。もちろん昔に建てた古い家は、基準も緩かった頃なので、運が悪ければ倒れてもおかしくないのですが、2016年の熊本地震では、築浅の家も倒れたこともあり、建築業界にも衝撃が走りました。

家が本当に地震に強いかどうかは、実際に地震が来なければ分かりません。だから、事前にきちんとした知識を持ち、工務店や設計士と話をできるようにする、というのが新築や耐震改修を考えている方にとっての最高の対策です。

そもそも地震動とはなにか

そもそも、地震動とはなんなのでしょうか。地震とは、地面の下の方にあるプレート(地殻)がずれて動く現象のことです。地殻を構成する岩盤には、常に力がかかっています。その力に岩盤が耐えられなくなったとき、ヒビが入ります。岩盤に力がかかっている原理は、簡単にいうと岩盤のさらに下にあるマントル(溶岩)が液状で対流するので、その影響でプレートが少しずつ動いてぶつかるプレートテクトニクスという説で説明されています。

さらに詳しくは地震発生の仕組み(気象庁)を見てください

震度とマグニチュード

この地震動を震度とマグニチュードという数字で表しています。震度は、地震の揺れの大きさ、マグニチュードは規模の大きさです。マグニチュードが大きくても、震源地が深ければ、震度は小さいケースもありますし、逆もありえます。震源地までの距離が近く、地表の浅いところで起きた時に、震度が最大になると理解してください。

ガル(gal)とカイン(kine)

ガルという言葉も耳にしたことがあるかも知れません。建物にかかる瞬間的な力を表し、1秒間にどれぐらい速度が変化(加速)したか表す単位です。1ガル=1cm/秒で表します。止まっている車を急発進させるのと、ゆっくり動かすのでは加速のスピードが違いますね。前者の方が加速度が大きくなります。カインは最大速度、ガルに時間をかけて表した地震の強さ、車に例えると動いた距離に相当します。 聞き慣れない言葉ですが、 一般的にカインの方が建物の被害と対応すると言われています。なお、震度とマグニチュードは地震ごとに表しますが、ガルとカインは同じ地震でも計測する場所によって異なります。

プレート境界と活断層

日本列島付近はこのプレートとプレートが接している部分、プレート境界が集中していると言われていますね。プレート境界で発生する地震を「海溝型地震」といいます。また、プレート境界にかかったエネルギーが、内陸のプレートの層(断層)を壊して起きる地震を「内陸型地震」といいます。断層のうち、数十万年以降に繰り返し活動し、今後も動く可能性があるのが「活断層」と言われるものです。日本では2000以上の活断層があることが報告されています。

耐震か制震か免震か

ちょっと難しくなりましたが、地震の仕組みについて説明しました。それでは建物が地震の被害を軽減しようとした場合、どのような方法があるでしょうか。

耐震

建物を固く作り、地震に耐えることを目的とした方法です。一般的な住宅はほぼこの考え方で作られていますし、建築基準法でも定められています。筋交いや構造用合板によって揺れに抵抗する壁=耐力壁を配置することで、揺れによる破壊に抵抗します。

制震

揺れ自体を抑えようと言う考え方です。建物にダンパーという震動軽減装置を設置し、地震のエネルギーを吸収します。上階ほど揺れる高層ビルなどでは有効ですが、木造住宅でも数十万円のコストで取り付けるダンパーが販売されています。伝統的な日本家屋(貫構造)もこれに似た考え方をしているといえます(壁は壊れますが)。

免震

建物に振動を伝えないようにしようとする考え方です。地面と建物の間にゴムなどでできた免震装置を設置し、振動を伝えないようにします。高層ビルなどで採用されます。地震の際に高層ビルがゆっくり揺れる動画をみたことがあるかもしれません。数百万円程度かかるため、住宅で採用されることは希です。伝統的な日本家屋の石場建てもこれに近い考え方になります。

耐震等級とは何か

耐震等級とは、地震に対する強さを表す数字です。平成12年に実施された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で定められました。耐震等級1が一番弱く、耐震等級3が一番強い3段階で表します。

等級1は、数百年に1度の地震(震度6強)で倒壊・崩壊しない/数十年に1度の地震(震度5程度)で損傷しないレベルとして、建築基準法の最低基準として定められています。等級2はその1.25倍(学校や病院などの最低基準)、等級3は1.5倍(消防署や警察署の最低基準)の性能があるとされています。

ここでは「等級1は、大地震で損傷する可能性がある」ということを理解してください。

耐震で重要になるポイント

地震の力が建物にかかったとき、主にどのような要素が影響を及ぼすでしょうか。重要になるのは3つです。

地震動の揺れに対向できる壁を、耐力壁といいます。地震に対して抵抗する壁ですから、多ければ多いほど耐震性が良い、ということになります。ただし、一部に耐力壁が集中すると、手薄になった部分に地震力が集中するので、バランス良く配置されることが重要です。また、耐力壁の端の柱には、揺れによって引き抜く力と押しつぶす力が働くため、これに抵抗する金物で補強されなければなりません。

壁と同じように、床にも地震の力がかかります。水平構面というのは、床の耐震性です。耐力壁が地震に対して踏ん張るためには、それに対応する強い床が必要となります。床が頑丈であれば、家じゅうの耐力壁にバランスよく地震力を分散しますが、耐力壁が壊れる前に先に床が壊れてしまえば、本来の耐震性能を発揮することができません。

建物の重量

重い建物ほど、地震の力が強く働きますので、建物自体が軽いほど、地震に対しては良いということになります。 また、重心は低い方が良いです。頭が重たいとフラフラしますよね。建物も同じです。同じ構造であれば、屋根が軽いほうが必要とする耐力壁が少なくて済みます。なので、地震自体については、瓦よりも金属の方が良い、と言うことになるのですが、瓦は瓦でメンテナンスがいらないといったメリットがありますので、きちんと設計されてつくられている、と言うことが大切です。

耐震性能の計算

では実際に耐震性能を証明するために、どのような計算が必要か説明します。

仕様規定

耐震等級1に必要な、最も簡単な計算の方法です。

  • 壁量計算
  • バランスチェック(四分割法または偏心率)
  • 接合金物の選定(告示の仕様またはN値計算)

からなっています。屋根の材料や積雪を係数をかけて床面積から地震力を、外周部の壁面積から風圧力を計算して、必要な耐力壁の量を算出します。それがバランス良く配置されているか、耐力壁の端にある柱についている金物は適当か判断して決定します。簡単と言いつつ結構計算っぽいことをしますが、基本中の基本です。

性能表示の計算

耐震等級2は長期優良住宅で必要な計算方法です。仕様規定より少し複雑な計算をします。基本的な考え方は、耐震等級1で必要な壁量計算と同じですが、1階と2階の床面積、建てる地域などによってより詳細な壁量を計算します。また、水平構面の床倍率確認、スパン表に基づく、横架材の検討を行います。

許容応力度計算

耐震等級3、3階建ての木造に必要です。いわゆる構造計算と呼ばれます。仕様規定や性能表示では、床面積に決められた数をかけて簡易計算していましたが、許容応力度計算は建物の重さを正確に算出して必要壁量を算出します。仕様規定の基準に加えて、部材ごとに耐えられる力(許容応力度)を算出し、部材に実際かかる力(応力度)がそれを超えないように設計します。この計算を行った場合、構造計算書として数十枚以上の紙の束が工務店や設計事務所から渡されるはずです。

耐震等級3相当って?

耐震等級は住宅性能表示制度によって規定されています。これは第三者評価機関が評価するものですので、耐震等級の認定を取得する場合、適切な資料を提出して申請料を支払わなければなりません。特に認定が必要でなければ、申請料を節約するために、耐震等級3相当とする場合があります。(なお耐震等級3であれば、地震保険が割引になりますが、相当ではならないので注意が必要です)

しかしながら、単純に壁量を1.5倍にして構造計算をせずに3相当と名乗っているケースもあり、構造計算をしてみたら、等級3になっていない?ということもあるようです。

基本的に住宅性能評価を受けなければ、構造を証明するものがなにもない、という状態になりますので、わたしたちは基本的に取得をおすすめしています。構造計算ができていれば、性能評価申請の費用自体は10万程度ですので、大切な資産の価値を証明するものとして取得されてはいいかがでしょうか。工務店や設計事務所に取得を依頼し渋られた場合は、構造計算できていないか、施工に自信が無い可能性があると考えられます。

命だけではなく暮らしを守る家へ

2016年の熊本地震での震源地では震度7が2度襲いました。耐震等級2や築数年の家も大きな被害を受ける中で、耐震等級3の住宅は全棟大きな改修無く引き続き住み続けることができた、という事実は重視されるべきです。

命は助かったが、被災後寝泊まりすることも不可能で、修復に多額の費用を要する家ではなく、壊れずに被災後も住み続けられる家をわたしたちは建てたいと思います。新築の場合、耐震等級3の取得に要する費用は、せいぜい+数十万程度のケースが殆どです(耐震改修の場合は、基礎の補強が必要なケースも多く、もう少し費用がかかります) 。ぜひ工務店や設計事務所に「等級3で建てて欲しい」との要望を伝えられてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

田上知明

AFP・2級FP技能士 / 2級建築施工管理技士 / 省エネ建築診断士
東京で3年間の会社員勤務の後、自分の家を自力で建てることを志して、建築業界へ。自分の家を建てるはずが、お客さんの家ばかりを建て続けて、結局そのまま大工をするようにになってしまい、結婚を機に鳥取の智頭町へ移住。
美しい田舎で建てたり狩ったりしながら、ぼちぼち暮らしたいと思っていたが、意外と忙しいのと、自分の家がまだ建てられていないことが目下の悩み。