循環式レンジフードを推奨する理由

弊社は珍しいですが、循環式レンジフードを標準採用としています。循環式は、内部のグリスフィルターと活性炭フィルターで油煙・臭気を捕集し、温度を保ったまま室内へ戻す仕組みです。換気ができないため、調理器具はIHの縛りがあり、ガスコンロだと採用不可能なのですが、自宅、事務所を始めメリットのほうが大きいものと考えています。

1 熱のロスを最小限に抑える

 一般的な排気式レンジフードは、調理中に一気に350~700㎥/hもの空気を屋外に捨てます。高断熱・高気密の家でも、この排気量は小さくありません。換気口や隙間から外気が強制的に引き込まれるため、冬はせっかく暖房した空気が置き換わり、夏は冷房した空気が逃げてしまいます。
 排気ダクトを貫通させないため、断熱層・気密層に穴を開けずに済むことが最大のメリットです。

もっとも、排気式のレンジフードを使ったからといって、ものすごく部屋が寒くなったりとか暖房代が高騰したりということが起こるわけではありませんが、熱環境が乱れることは事実です。

2 計画換気との相性がよい

 現行の24時間換気設備は、給気と排気のバランス設計が不可欠です。排気式レンジフードを作動させると、設計上の気流が崩れ、換気システムが逆流する可能性があります。現に、弊社が採用している一種換気装置ローヤルのSE200RSのモーターでは、レンジフードの排気に勝てません。循環式であれば換気計画を乱さないため、高性能住宅で計画通りの空気質を維持しやすくなります。

3 レイアウト自由度とリフォーム適性

 排気ダクトが不要な循環式は、アイランドキッチンや吹抜け横のペニンシュラ型など、開放的なプランにも容易に対応できます。天井内に長いダクトを回す必要がないため、梁せいを抑えた低天井設計や、構造材を見せる真壁づくりでも納まりがすっきりします。 また、既存住宅のリフォームでダクト経路が確保できない場合でも、レンジフード本体と100V電源だけで更新可能です。外壁に新たな貫通孔を開けずに済むため、雨仕舞いや防水保証にも悪影響を与えません。

4 メンテナンス性の向上

 従来は「活性炭フィルターの交換が面倒」「臭いが完全に取れない」という声もありました。しかし近年は、脱着ワンタッチ・食洗機対応の金属グリスフィルターや、約3年に一度で交換できる長寿命カーボンカセットが主流です。フィルター交換を定期点検と同時にご案内する仕組みを整えることで、使用コストと手間を大きく抑えられます。フィルター費用を月割にすると、1000円いかないと思われます。個人的には毎日唐揚げをします!みたいなご家庭でなければ、まずメーカー推奨の寿命程度は間違いなく持つであろうと考えています。

5 防火・耐久の安心感

 ダクトレスゆえに、キッチンから屋根裏・外壁までの貫通部を耐火被覆する必要がなく、火災時の延焼リスクを低減します。また、外部に吹き出される油煙による壁面の汚れや、ダクト内の結露・油膜による腐食トラブルも心配ありません。僕個人としては、断熱の保温巻きはけっこう大変だと思っています。鋼製のスパイラルダクトをそれなりの値段の耐熱保温材で巻いていくので、経路が長い場合は手間もかかります。

まとめ

弊社に来られるお客さんは、実際の住環境のストレスの無さを期待されています。確かにキッチンの排気はそのまま外部捨てるほうがよいという考え方は理解できますし、単純な排気扇のほうがコストも下がることは事実です。一方で、これまで同時給排であったり、電磁シャッター、差圧式給気口などを試してみましたが、レンジフード使用時に不快感があることは避けられませんでした。プランの自由度や、メンテナンスなどを考えても、ご説明の上で、循環式の方が弊社の家に向くのではないかと思っています。

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